ヒューマンエラーの考え方


DiD Risk Monitorでは、アクターである人間の行動は、シナリオに沿って再現されます。このシナリオは、予め与えられた手順や、準備されているマニュアルが、想定される緊急事態において正しく利用可能なものかどうか、その成立性を確認するために、与えられた手順やマニュアルを、そのまま入力し、アクターは手順やマニュアルどおりの振る舞いを行います。そのため、この与えられたマニュアルや手順の評価を行う観点から、アクターは、マニュアルから逸脱した行為や、やるべき行為をやり損なうようなエラーをおかすことは想定しません。

しかし、DiD Risk Monitorを使った分析者が、相互作用シミュレーションの過程で、エラーを誘発し易い作業状況を発見した場合、あるいは、エラーが発生した場合においてその影響が大きくなりそうな状況に気がついた場合には、あえてエラーをおかすようなシナリオを想定し、その結果をシミュレーションすることは可能であり重要です。

現在は、どのような状況において、どのようなエラーを考慮するかは、分析者が慎重に検討してシナリオ化することになりますが、将来的には、このような分析者の検討を支援するような枠組みも提供したいと考えています。

例えば、シナリオの個々のステップにおいて、どのようなエラーが発生しうるのかについてはRasumussen*1やReason*2が、どのような行為において、どのようなヒューマンエラーが起こりうるかと行ったフレームワークを提案しています。これらを活用した支援機能が考えらます。

参考:ヒューマンエラーのフレームワークについて

 

*1 Rasmussen, J. Human error. A taxonomy for describing human malfunction in industrial installations, Journal of Occupational Accidents, 1982, 4, p. 311.

 

*2 J Reason, J., Human error, Cambridge University Press,1991