ここでは、実際にDiD Risk Monitorを使った分析の主な流れを紹介します。
Step.1 手順データの入力作業
データを入力するためには、すでにある対応マニュアルを入れるだけでは、1つのシナリオで1〜2時間の作業で簡単に入力は完了します。
(ただし、実際に入力に要する時間は、シナリオの長さや、参加するアクター数にも依存します。また、その作業の理解度や、DiD Risk Monitorの理解度にもよります。)
しかし、実際には文章には書かれていない暗黙のルールや連係をきちんとシナリオデータに入力しないとシミュレーションが正しく動作しません。
それゆえ、この入力作業を行うことにより、実施する手順の流れが明確に理解できる効果があります。
DiD Risk Monitorは、このStep1では、作成したデータに不整合(部品名とイベントハンドラのミスマッチ)や、イベントの設定抜け、部品の設定抜けを随時チェックして支援してくれます。
Step.2 シミュレーションを最後まで動作させる ーデータ分析1ー
全てのアクターのシナリオデータを設定し、入力したシナリオどおりに最後まで到達できるまでに、様々なデータの修正が必要となります。
この修正作業には、データ入力作業(Step.1)と同じぐらいの時間がかかります。
入力したシナリオデータの完成度が低い段階では、Step.1で書いたような暗黙の手続きや連係が抜けていて、正しくアクター間の連係が行われず、シミュレーションは途中の段階で停止したままとなります。
相互作用シミュレーションの結果となるシーケンス図を見ると、シナリオ通りにいかない箇所は容易に発見でき、そこから指示するアクターが指示を出したのか、あるいは、指示が出ているにも関わらず、指示を実行するアクターが無視しているのか等を調べて、適宜修正していきます。
これらの分析を通じて、アクター間の連係の明確化や、手順に対する認識の誤りを発見することができます。
DiD Risk Monitorは、シーケンス図から問題箇所となる手順へ即座に切り替えられる問題発見、修正を支援します。また、シミュレーションの100倍速再生で、これらの修正と評価の繰り返しを効率的に進められます。
Step.3 時間に着目した分析 -データ分析2-
チェックポイントへの到達時間や、保留されているタスク、待合せ時間に着目して、問題ないかどうかを調べます。
これらの時間のかかっている部分を発見し、その原因を考えてゆく過程を通じ、他社の手順の流れは手順の改善策、潜在的な課題を発見できます。
Step.4 故障、トラブル等を考慮した分析 -データ分析3-
これまでの分析から、クリティカル・パスや潜在的に弱い部分が概ね理解できます。そこで、このような部分で該当作業が想定よりも数倍(倍数は設定可能)かかるような想定や、利用できる移動経路が使用不能となって回り道が必要となる想定等を行い、シミュレーションを繰り返します。
このような想定においても、与えられた手順は有効に対応できるのか、対応できないなら、それに対応できるような手順の追加等を検討することで、一層の事故対応力を向上させることができます。
分析結果の一例
この例では、DiD Risk Monitorを開発したコンサルタント自ら、とある発電所における事故対応手順を例題に分析を行いました。
実際の活用では、このようにコンサルタントに調査を依頼する方法以外にも、実際に対応作業を担当する人々がコンサルタントと一緒に集まって、研修のような形で、それぞれの方が自ら理解しているとおりの手順をシナリオデータとして入力し、シミュレーション、分析を行って、手順への深い理解や、手順に含まれる潜在的な問題点をグループ形式で検討してゆく方法も有効と考えます。
この事例では、Step.3やStep.4で、致命的ではないものの、対応要員数が不足する状況があること、さらに、このような場合に、他者が支援する手順が明確化されていなかったこと、特定の作業者に過度に複雑な作業が割り当てられ、さらに複数の作業を並行して実施しなければならない問題等を発見することができました。
この事例を、当該発電所の関係者の方とレビューを行い、手順の成立性をチェックするツールとして有効であるとのご意見を頂きました。